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初版公開:2013年1月3日


【003】蜃気楼の中で   作:イサリ

☆=1  ☆☆=10  ☆☆☆=9 合計=48

☆☆(フミん)
☆☆(逆行)
☆☆☆(乃響じゅん。)
☆☆(穂風奏)
☆☆☆(<無記名>

☆☆☆
読みやすさがトップレベル。こんな文章が書ければどんなにいいだろうと思います。
孤島を覆う雄大な自然、力強い息遣いが感じらせるポケモン達、切々とした男の想い、それら全てが画面から迫ってくるようです。
使い古された『アブソルは災禍の象徴であるという人間の誤認識』……人間がたった一人しか登場していないのにこの設定がここまで映える小説なんて他にないんじゃないでしょうか。
アブソルを倒してからの男の感じる虚しさの描写も丁寧で素晴らしいです。どこぞの無人島生活番組だの、飛行機で墜落して孤島でサバイバルするだのよりもしっかりと『無人島』してました。
とても一万字程度の小説とは思えないような濃さ。僕の中では、文句なしの一番です。
◆朱烏

☆☆☆
最後の最後でなるほどと思った一作です。マボロシ島の独自解釈を軸に話を進めていて、これぞ二次創作という印象を受けました。文体が敬体なのも昔のお話というのが強調されていて良かったと思います。また、最後の『十年間の時を経てもなお〜』の部分が時というテーマを強調しているようで素敵でした。
◆(無記名

☆☆
まぼろしじまの話。非常に丁寧に書いていたと思う。邪魔だと思っていたあいつでも、いなくなった途端に満たされなくなってしまうものだよね。
◆No.017

☆☆
雰囲気好き。ポケモンの表現の仕方?がいいと思う。
◆砂糖水

☆☆☆
 素晴らしいです。絶海の孤島でのポケモン達の生活。そこに介入した「男」、つまり人間の生き方。そしてそれの愚かしさ。全部丁寧に描かれていて面白い。また、お題である「時」の絡ませ方も見事です。
 ただ、読後感が少し物足りないような気がします。それを差し引いても、十分すぎるほどに面白いのですけれども。
◆利根川 泰造

☆☆
 冒頭にある『昔むかしのお話です。』の通り、徹頭徹尾の民話調で完結した話でした。
 ですます口調で主人公の感情を的確に表しつつも、感情の色が見えない文章。また、ポケモンの種族名をうまく言い換えたのは民話調の物語によくあっていたと思いました。
 ただ、あまりに完結されすぎた世界観だったので、自分の感情が入り込む余地がなく、感心する以上の感動が得られなかったので、☆三つを与えることはできませんでした。ごめんなさい。
◆西条流月

☆☆☆
 最も印象深かった作品の一つ。今回の企画の中にも、幾つか心ひかれたり記憶に残ったりするシーンがありましたが、この作品のそれは殊更濃かったです。……個人的に、前半部で一番読み応えがありました!
 作中の大まかな流れは、世に数多ある漂流紀ものとそう大差あるものではありません。……が、その王道な流れを正しく踏襲しているだけに、読み手としては飽きが来ない(笑) 九死に一生を得た主人公が、隔絶した空間で疑似的に人の文明の道筋を辿り、自らの生活圏を確保して行くその様は、アイデンティティの回復と言う暗喩の側面からも、読者の意識を捉まえて離さないものです。
 そしてこの作品では、そこにまたポケモンとの葛藤と言うもう一つの要素が練り込まれている。……これとて遭難・冒険ものではそう珍しいネタではないのですが、ここは何と言っても作者が上手い。心理描写や情景描写を巧みに用いて描き出す攻防戦は、今回の作品群の中でもトップクラスの読み応えがありました。
 翻って残念に思えたのは、その獣との戦いが終わった後、主人公の行動が非常に散漫になっている事ですね。確かに所謂燃え尽き症候群に陥ったと言うのは理解できるのですが、それにしたってちょっと余りにも重篤過ぎやしないかと(苦笑) なんか作中主人公に合わせて筆者の方も燃え尽きてしまったのかと思わせるぐらい激しく流されてて、物語のクライマックスを迎える前に一度目が覚めてしまった様な感触がありました。ラストのオチも結構好みだったので、どうしてもこの間が残念だどうしてくれましょう、と言うお話でした(笑)
◆クーウィ

☆☆☆
男の無人島での生きざまを中心に動く物語だっただけのことはあり、「漂着以来どのようにして生き延びたのか」ということがよく描き込まれていたと思います。序盤での粘り強い描写が、物語の世界に読者を引き込むにあたって大きな役割を果たしているように感じます。
不倶戴天の存在であったアブソルを仕留めて以来島のポケモンたちが息絶えていく様子は、ミオのとしょかんの神話(「ポケモンはすがたをみせなくなった」の神話)を彷彿とさせます。個人的にこの神話が大変に印象に残っているので、水兎たちが死に絶えてゆく場面では緊張しきりでした。
◆小樽ミオ

☆☆
起承転結のしっかりした、読みやすい作品でした。マボロシジマにアブソルやマッスグマなんていたかしら?と思いつつ読んでいたのですが、終盤でああなるほどと納得。人間は恐ろしく業の深い生き物ですね。
◆ミルメコレオ

☆☆☆
かなり好みでした。最後のほう、「ざまぁ」って思ってしまうのは私が腹黒いからだと思います(。
砂漠の神の子でもそうでしたが、描写が細かいですね。槍を作ったり、弓を作ったり。こういうのは、わたし結構適当なので、見習わないといけないかなと思いました。

昔話風の語り口でしたね。こういう文体だと余韻が大事なんじゃないのかなと私は勝手に思っています。そういう意味でも、このストーリーはとてもよかったです。終わり方もそつなく、素敵。
◆SB

☆☆☆
 読了後に、良い意味でもやもやした気持ちの残る作品でした。
 男の知恵としたたかさに感嘆しつつ、己の為ならば他者を傷付け追い込むことも厭わない姿に嫌悪感を覚えたり……。ああ、「人間」だなあ、という苦い気持ちになりました。命までは奪わないという白獅子と、何としても相手を殺そうと執着する男の対比も良かったです。共生か、征服か。現実の獣と人間の関係を考えてなんとも言えない気持ちになりました。
 個人的に非常に好みであり、かつ構成も展開も粗の無い良い作品だったと思います。ただ一点、【彼は知る由もありませんでしたが、普段歪んだ時空の狭間に存在するその無人島は、およそ十年に一度、不思議な木が赤い実を結んだ時にだけ蜃気楼のように姿を現すのでした。この時を逃せば、男はまた次の十年、幻の中をさまようことになったでしょう。】この部分だけが気になりました。今までが男の視点・思考に近い語りだったので、彼の知り得ない情報を出されたことに違和感を感じてしまいました。最後まで引き込まれていただけに、ふと意識を引き戻されて惜しいなあ……と思ってしまいました。
◆ラクダ

☆☆
男が生活のレベルを上げていき、またそれに対応して周囲の様子が動いていく様子は、時の移り変わりを感じさせてくれてよい表現だと思います。
幻島がソーナノしかいなくなるまでの理由付けもしっかりと行われており、設定を上手く解釈した作品だと思いました。
ただ、アコニチンがそんなに長く水に残るのかな……という疑問もありましたが、トリカブトの毒って個体数が少なくなるくらいに残るものなのでしょうか? ちょっとばかし気になります。
◆リング

☆☆
全編通して安定した文体で、すっと入ってくる読みやすい作品でした。主人公を「見知らぬ無人島に漂着した男性」とすることで、同じく何も知らない読者が感情移入しやすい形になっているのは親切だと思いました。主人公が島での生活を確立していく様は非常に面白く、かつて「十五少年漂流記」を読んだ頃の記憶が蘇りました(置かれた状況は、向こうとは比べものにならないくらい深刻ですが)。全体を通してとても高い水準でまとまっている、優れた作品でした。
◆586

☆☆
男が自由について語るところがよかった。
ポケモンを漢字にすると読みづらく感じ、あまり好きではないのですが、改行などに気を配ってあり、読みやすいと思います。
◆きとら

(作者票)
これが私の作品です。ちょっと作者ばれしやすかったかしら……。
◆イサリ