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【応募作品一覧】| 010203040506070809101112| ◇イラスト| 01

初版公開:2013年6月1日


●ダンゴロの夢

 外で雨が降っている

 俺の住むあなぐらは、
 じめじめと湿っぽい

 雨の音がよく聞こえる

 俺はあなぐらを飛び出した
 当たり前に降り続く雨の中、
 俺はただただ呆然としていた

 雨に打たれ俺は痛みを覚える
 その痛みは少しずつ俺の身体に馴染み、
 俺はいつしか雨の一部となっていた

 取るに足らない小さな雨粒
 それになった俺は思う

 空から堕ち
 川を流れ
 海へ辿り着き
 そして空へ還る

 空から堕ち
 川となり
 海となり
 そして空へ還る

 その姿はまるで、永遠のようだ

 繰返しくりかえして百年後、
 俺は小さな池となった
 ほとりにはあじさいが咲き、
 蛙たちが住まい、
 幸せに暮らしている

 俺がそんな夢から醒めたのは、
 だれかが俺の傘となり、
 俺と雨とが切り離されたせいだった

 だれかは俺の使うそれとは違う言葉で、
 はっきりとこう言ったのだ

「あなたは雨ではないのです」

「あなたは必ず死ぬのです」

 そしてだれかは、
 俺の魂を抜き取り、
 それを抱えて空へ昇った

 地に横たわった俺の身体は、
 みるみるうちに小さくなった
 まるでひとしずくの、
 雨粒のようになった

 だれかは俺の魂を、
 雲の中へとおもむろに放り投げた
 やがて俺の魂は雲と混じりあい、
 そして俺は雨粒となった

 百年後、
 俺は小さな池となった
 ほとりにはあじさいが咲き、
 蛙たちが住まい、
 幸せに暮らしている

(566文字)

●作者メッセージ(作:利根川 泰造さん)

 ダンゴロって、何考えてるのかわからないですよね。表情が見えてこなくて。
 それで、ちょっとダンゴロの気持ちになって詩を書いてみたら、この作品ができました。
 でもこの作品のダンゴロって、たぶん異端児ですよね。雨降ってるのに外出てるんだもん。
 一般的なダンゴロの気持ちは、分からずじまいです。たぶん、私には一生わかりません。
 読んで下さった皆さま、本当にありがとうございました。