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●同人漫画でいうとサンプル的な何かです

(あなたは最高の召使よ。わたしの、最高の召使)
いつだったか主人が口にした言葉を思い出す。エルルはそう言ってアサナギの髪をかきなでた。あのときの言葉は、熱を帯びた指先の感覚は、いくら月日が移ろっても忘れることはできない。召使としてそばに仕えることを許してもらえた喜び。それも、最高の召使の名の下に。それは甘美で、思い起こすたびにアサナギの胸をいっぱいに満たす。もっと尽くしたい、すべてを捧げたい――想いが強くなればなるほど、彼の心の中は主人のことだけに支配されていく。他の考えごとなど思い浮かびはしない。包み込むような主人の言葉は、アサナギの心を完全に糸で縛り上げていた。

 ◇

「わかるかしら。プレッツェルよ。たまには塩味の利いたお菓子も、悪くないでしょ?」
エルルが手にした箱から取り出したのは、稲穂色の表面にさらに濃い焼き色を持った、いくつもの細長い棒。彼女の言通り、それは見まごうことなくプレッツェルだった。塩の結晶が部屋の明かりをかすかに屈折させて輝いている。口に放り込めば、あの愛おしい塩味が残るはずだ。思わず、喉ぼとけがこくんと動く。
「それをわたしも、いただいてよろしいのですか?」
「ええ、そうよ。――でも、条件があるわ」
困惑しながらもひそやかに瞳を輝かせる召使。その表情を楽しむようにしながら、エルルは言葉を継ぐ。指と指の間にプレッツェルを挟んで引き抜いた。そうしてそれを口元へと持っていくと、白い歯をのぞかせながら、片端を口の中へと食んだ。
『命令よ。食べたければ、わたしが食べているのとは反対側を、そのまま口にくわえなさい』

 ◇

「ーーーっ!? っ、っ!! ーーーーーっ!!」
「ちゅ……っ。はむ、ちゅっ……。んむ、ちゅぷ、ちゅっ、ちゅうっ……む、ちゅっ」

 舌と舌が、絡みあった。
 召使のくちびるをこじ開けるように真っ赤な舌を割り込ませて、奥へ奥へとねじ込んだ。熱い熱い召使の口の中を、エルルは隅々まで舐めまわすように弄ぶ。召使が逃げ出せないように、彼の両腕の上から背中へと回した両腕を、彼の体ごときゅっと抱き寄せながら。
「ぷちゅっ、ん、むぁっ、ぷ、ちゅ。んむぅっ、ちゅぷちゅぷちゅぷっ、ちゅうっ、ちゅうぅぅっ」
「んぅぅっ、ぷ、はっ、んむぅぅぅぅぅぅぅっ!! むぅっ、んんん〜〜〜〜っ!!」
蜘蛛の糸は、彼には見えていなかった。姫が織りなした甘美な糸が、蝶のようにか弱い召使を絡め取り、抵抗の意志を摘み取る。けれど蜘蛛は、獲物をすぐに喰らい尽くすことはしない。手にした食事をいとおしむように、隅から隅まで堪能する。抱き寄せる両腕に力を込めて、獲物を縛り上げる。そして拘束されたまま抵抗もできずにいる召使を、舌遣いで犯していく。ちゅぷ、ぷちゅっ。ねばねばな湿り気を含んだ音だけがふたりきりの部屋に響き渡り、跳ね返って増幅する。逃げ出そうとする召使の舌を捕獲して、唾液を送り込んで、絡めあって交換する。蛇のように蠢く真っ赤な舌同士が重なりあうたびに、絶えることのない涎が口の端からあふれ出て、エルルのスズランの花の上に濡れた灰色のしみを残していく。
『わたしのキスの味はどう? 甘い? うれしい? きもちいい?』
「ーーーーーっ! 〜〜〜〜〜〜〜っ!!!」
『あなたのおくち、とっても熱くて、ぬるぬるしてきもちいいの。あなたはどう? わたしの舌におくちを無理やりいーっぱい犯されてきもちいい? ねえ、もっとしてほしい?』

『それとも、……もうやめたい?』

 ◇ 

第一話へ

 ◇ 


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